【蔵訪問記】花巴 (美吉野醸造)
先月伺った奈良・吉野の美吉野醸造さんの蔵訪問記です。
京都から近鉄で奈良へ。奈良で車を借りて、大神大社へ参拝したのち、一路、世界遺産登録の吉野山がある吉野町へ。蔵は吉野川 (紀の川) 沿いにあります。蔵の事務所からの吉野川 (紀の川) の眺め。
伺った日は天気も良く、2月の中旬でもずいぶん暖かく感じました。
何より驚いたのは敷地の狭さです。
蔵内の勾配のきつい階段や屋根・天井、麹を階下に降ろすリフトなど、敷地の狭さゆえの蔵内の造作の工夫には目を見張るものがありました。
橋本専務とは蔵を案内していただく前にイロイロイロイロ・・・本当にいろいろたくさん話をしました。吉野の林業、農業 (=酒米) と協業し、美吉野醸造として吉野の酒造業を担うことで、地域の役に立ち、盛り上げていくこと。
とくに印象に残ったのは、酒米生産者の圃場の環境 (平野部なのか山間部なのか) によって上がってくる酒米の質がまったく違うこと、それぞれの米質に寄り添った酒造りをしているということでした (終わりのない追求です)。
林業とは、吉野杉。その、吉野杉の木桶で少量ですがお酒を仕込んでいます。
吉野杉は、吉野川 (紀の川) を渡って大坂・堺に送られ、堺で樽が造られ、その樽に詰めた灘の酒が江戸まで運ばれていたといいます。吉野杉が重宝されたのは、水漏れが少ないこと、香りが穏やかであること、淡い桜色であることなどの特長によるものだったそうです。実際に吉野杉の断面図を見せていただきましたが、年輪が細かく、色がついている部分と外側の部分の間のところを樽に使うことで、水漏れがなく他の木材に勝っていた、ということでした。
蔵のある吉野は、もともと保存文化が進んでいる地域で、自然と発酵がすすむ多湿な山林地帯なのだそうです。その発酵文化を受け継いでいく、そして蔵自体が上質な酸が出る環境なので、それを活かして酸を解放する酒造りを目指しています。
速醸、山廃、水酛と3つの製法でお酒を造っていますが、いずれも酵母は無添加、乳酸の力を借りて酸と旨味を同調させたお酒となっております。
室の麹、出麹、もろみを見せていただきましたが、まさしく花巴の原点を目の当たりにし、身震いがしました。水酛は早い時期に仕込んでしまうため、伺ったタイミングでは、すでにお酒になっていたというオチ。。。
ひととおり蔵内を見学した後は、お待ちかねのきき酒。蔵のことを知ってきくのとそうでないのとでは全く違うということを改めて実感。いずれも特徴である酸がキーワードになるのですが、速醸、山廃、水酛それぞれのスタイルを体感しました (当店では現在、山廃仕込みと水酛仕込みのお酒をご案内しております)。
いちばん印象にのこったのは水酛×水酛。水酛仕込みの仕込み水を水酛純米酒に代えて造るという、貴醸酒タイプのお酒。ドイツワインを彷彿とさせる甘酸っぱさとまろやかさに心奪われました。こちらは720mlのみ入荷しております。
固定ファンの多い花巴ですが、飲んだことのない方にも花巴ワールドをぜひ楽しんでいただきたい、と思っています。気になった方は是非チェックしてみてくださいね。